廣島大學天文學会の誕生に際して
                                                    
                                                
会長 村上忠敬

 
“All's well,that bigins well.”という諺があるが、今年新発足した広島総大も、
どうぞ初めからアカデミックな香り高い眞の意味の大學であって欲しいと切に
願っている。しかし広大の現状を見ると施設の不充分、特にカリキュラム外活動の
本拠とも称すべき図書館及び実験室が學生諸子の利用に任せられない実情にあるため、
どうひいき目に見ても充分に大學らしいとは云ひえない。學生諸子も從って講義の
ないときは直ぐに下宿にでも帰るか、又はグランドで野球のまねでもする外はない
のではなからうかと気の毒に堪えない。

 こういふ次第であるから學生諸子の盛り上がる熱意によって茲に広島大學天文學会が
誕生し、少人数ではあっても趣味として又學問として天文學をカリキュラム外に研究し
論議し実地に観測したりする人人のあることは非常な喜びに堪へない。願わくはこの会が
單なる趣味の会として一個所に低回することなく、廣くき教養を積まんとする若人の
たゆまざる努力の結果として、一歩一歩堅実なる前進を遂げ、広大の學風を形成する
一端を荷なうに至るようにと望んで已まない


                      Astronomical Society of Hiroshima University 會誌 December 1949 Vol.1 No.1』より

                  編集者註:フォントの関係でホームページでは表記できない文字があるため、一部に新字体の漢字を
                         使用いたしました。本「拠」、低「回」は原文では旧漢字で書かれています。